『サムスン電子副会長「半導体危機論」半導体業況を取り巻く3つの問題』
米中対立の中、漁夫の利を期待していたサムスンですが、副会長の逮捕状騒動や日韓関係悪化に苦しめられ、アメリカとタッグを組むことを決めたTSMCが勢いを増す中で、中国市場も捨てきれない…
様々な悪影響を受ける中、韓国経済の未来を背負ったサムスンはどう動くのでしょうか。
サムスン電子の「半導体危機論」は大げさだろうか本物か
サムスン電子「半導体危機論」は大げさか?
連日危機論を唱えるサムスン電子のイ・ジェヨン副会長は、台湾のTSMCと5ナノメートル顧客獲得競争に押され、生き残る道は「技術」…
低消費電力、高性能半導体生産技術の確保で顧客を引き付ける必要があり、3ナノメートル工程、GAA技術の重点は「大袈裟」と見ることはできない。
サムスン電子のイ副会長が19日、サムスン電子半導体研究所を訪問して言った言葉だ。
彼は「未来の技術をどれだけ迅速に作り出すかに生存がかかっている」とし「時間がない」と強調した。
イ副会長が語った「半導体の危機的状況」と「未来技術」とは何だろうか。
イ副会長の「半導体危機論」は大げさだろうか?本当だろうか?
サムスン半導体事業を取り巻く国内外の環境は大きく3つに整理できる。
1番目は、米国と中国の半導体をめぐる「新冷戦」だ。
米国政府は、中国ファーウェイ社の半導体製造を遮断することにして、この動きがサムスンにも飛び火する可能性が大きくなっている。
米国と中国の間で選択を迫られているのだ。
すでにサムスンには双方の懐柔と圧迫は開始されている。
台湾のIT専門媒体デジタイムズによると、中国ファーウェイはサムスン電子に△通信チップを供給すること
△ファーウェイの子会社ハイシリコンが設計した半導体の生産を要請、しかし、これをサムスン電子が断ったと報じた。
サムスン電子では、こうした報道について、「顧客関連事項は確認できない」としているが、半導体業界では「可能性は十分ある」と評価されている。
米国も継続的に自国に対する投資を間接的に要請している。
米国政府がサムスンに追加でファウンドリー(半導体受託生産)工場を建設するよう圧力をかける可能性が高い。
サムスンの立場では、解決が難しい問題だ。
すでにピョンテクに10兆ウォン規模のファウンドライン追加投資を決めた状況で、米国にさらに投資することは容易ではない決定だからだ。
2番目の危機は、中国半導体メーカーの躍進である。
中国のYMTC、CXMTなどメモリー半導体(Dラム、NAND型フラッシュ)メーカーは先を争って新製品の発売を予告している。
最近は、世界5位のファウンドリー企業の中国SMICが大規模な資金調達を通じ、工程の微細化に力を入れている。
サムスン電子の関係者も中国企業の積極的な動きについて、「市場変化のモメンタムになるだろう」と警戒している。
3番目は、サムスン電子のシステム半導体(Dラム、NAND型フラッシュなどメモリー半導体を除いた事業)事業に対する牽制だ。
サムスン電子が30年までに世界トップを達成すると発表したファウンドリー事業が代表的な例だ。
台湾のTSMCは第2四半期の予測値基準で51.5%の世界シェアを占め、2位のサムスン電子(18.8%)とは大きな格差を持っているが、投資を怠っていない。
ファウンドリー技術の尺度は工程の微細化。
微細化水準は半導体トランジスタで電流の流れをコントロールするチャンネル幅(線幅)で表すが、最近は7ナノメートル工程でさらに微細な5ナノメートル工程で進められている。
現在、7ナノメートル工程が可能なファウンドリー企業は、世界でTSMCとサムスン電子しかない。
5ナノメートル工程で作られた半導体は、7ナノメートルより電力効率が良く小さくすることができる。
TSMCやサムスン電子の半導体生産を注文するクアルコムのような会社では、パフォーマンスに優れ、従来製品よりも小さい半導体を作ることができるので有利である。
サムスンはTSMCに比べると5ナノメートル工程でTSMCに押されている。
【この記事に対する私の見解】
米中対立が激化する中、米国は中国包囲網を形成する一環の新しい貿易ルールとして、米国製半導体の中国への販売禁止を強化することを発表しました。
ファーウェイと関連企業114社への輸出管理を強化することが決定したわけですがこれを受けファーウェイは、サムスンとTSMCに対し、米国製装置を使用せずに最先端の製造ラインを構築することを提案しているようです。
しかし、TSMCはすでに米国に工場建設を決めるなど、米国とタッグを組むことを公表しており、ファーウェイの提案への対応には躊躇している様子が見られます。
通信チップの供給路、ファーウェイの子会社ハイシリコンが設計した半導体の生産は断ったと見られているサムスンですが、米国製装置を排除した製造ラインの構築には前向きな姿勢を見せていると言われています。
サムスンとTSMCが可能としている7ナノメートルプロセス製造ラインですが、サムスンは現在の米国製装置に依存する体制から脱却しようと画策しています。
基本的に、半導体製造において重要な役割を担う機器は、米国と日本のメーカーによって独占されています。
サムスンは日本企業とは太いパイプがありますから、日本企業に米国企業が担っている部分を置き換えようという狙いがあるようです。
日本企業も高い技術を持っている企業が多く存在しますから、理論上は、米国製装置を使用せずに半導体製造ラインを構築することは実現可能です。
しかし、生産力の面で言えば、米国には大きく劣ることは否定できません。
中国でも半導体製造の基盤を構築してきてはいますが、品質面、技術面では疑問が残りますし、ここで大きく中国に依存することは、米中対立の最中で得策とは言えないでしょう。
しかし、米国と中国という大国から独立した生産ラインを確立できれば米中対立で揺れる多くの顧客がサムスンを選択することは想像にかたくありません。
一方でTSMCは米国に、新たに5ナノメートルプロセスを用いる工場を建設する計画を発表しています。
米国の巨大な資本を受けて、急速成長の気配を見せているTSMCにサムスンは立ち向かうことができるのでしょうか?
いずれにせよサムスンの生き残る道は、米国寄りに一気に舵を切るか、日本企業とタッグを組むことで、独自の生産ラインを作り上げる他なくなってきています。
どちらを選んでも、韓国国内における開発、生産強化は破棄することとなり、サムスンの脱韓国は避けられない事態になりそうです。
■この記事に対する反響のポイント
・TSMCには敵わない
・中国は選んではいけない
・サムスンは韓国を出るべき
それでは、この記事に対する反響なのですが…
TSMCに追いつこうとしているサムスンに対して、「勝負は無理」という辛辣な意見もありますが、「ここまでシェア拡大してきたことは素直に凄い事」だとの評価もあります。
しかし、ネックになるのは「韓国という枠に囚われていること」と見ている意見が多く、「サムスンはアメリカに行くべきだ」といった声も多くみられます。
そして、中国からの圧力ですが、これについては「米国を選べ」という意見一色と見ていいでしょう。
皆が韓国の命綱と認識しているようで、堅実な意見が多いですね。
【これに対する私の見解】
といったように、韓国国内でも大黒柱サムスンが、米国を選択したTSMCに遅れを取り始めていることを危惧する声が多く見られます。
そして、「サムスンの最大の短所は韓国の会社だということ」という声が示しているように、サムスンの生き残りにおける最大の懸念材料は文政権の暴走です。
日米との関係を悪化させるだけではなく、中国とも適切な関係を築けているとは言えません。
それどころか下手にでてばかりのごますり外交で、文政権以降は中国とのパワーバランスが大きく崩れてしまいました。
財閥解体に力を入れているため、サムスンも当然目をつけられています。
副会長の逮捕状騒動により、韓国国内では身動きが取りづらい状況が続いています。
また、日本との独自の生産ラインを模索する中では、対日プロパガンダを垂れ流している文政権は、まさに目の上のたんこぶと言っていいでしょう。
中国市場を意識して、米国の肩を持ちきれないサムスンの綱渡りはまだまだ続きそうです。
続きは動画で…