『北政府と金正恩に訴訟を起こして勝訴！賠償金は支援予定から支払われる？』
この北との溝が深まっているタイミングで韓国の裁判所から北に対する国家賠償請求判決が出ました。
文政権による、国民の対北感情に対するガス抜きなのか、ソウル地裁の独断なのか、判断が分かれるところではありますが、南北間における新たな懸念材料となりそうです。
裁判所「金正恩氏、脱北国軍捕虜に2100万ウォンずつ賠償せよ」
朝鮮戦争の時に北朝鮮軍に捕虜として捕らえられて強制労役を強いられた元軍人が、北朝鮮政府と金正恩国務委員長を相手取り訴訟を起こして勝訴した。
原告は賠償金確保のために北朝鮮に渡す著作権料のうちの一部を差し押さえると明らかにし、南北関係がさらに悪化するのではないかとの見方が出ている。
今回の判決は「韓国版ワームビア」事例といえる。
２０１５年北朝鮮に抑留され、昏睡状態で米国で送還された直後に亡くなったオットー・ワームビアさんの両親は、北朝鮮に対して米国裁判所に損害賠償訴訟を起こして５億１１４万ドル（現レートで約５３９億円）の賠償判決を受けた。
ワームビアさんの両親は、北朝鮮が世界中に隠匿している資産の追跡に出て、賠償金の一部を受け取っている。
ソウル中央地方法院民事４７単独キム・ヨンア判事は７日、ハンさん（８６）とノさん（９０）が北朝鮮と正恩氏を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、被告に対して原告に２１００万ウォン（約１８９万円）ずつ支払うよう命じる原告勝訴判決を言い渡した。
ハンさんらは「捕虜になり停戦後も韓国に送還されず北朝鮮内務省建設隊に配属され、労働力を搾取された」とし、２０１６年１０月に訴訟を起こした。
２人はそれぞれ２０００年と２００１年に北朝鮮を脱出した。
この訴訟は北朝鮮側に訴状を伝達する方法がないため３年近く進めることができない状態だったが、裁判所が昨年５月に公示送達を命じて進展がみられ始めた。
公示送達は訴状の伝達が難しい訴訟当事者がいる場合、裁判所の掲示板や官報に関連事実を掲示した後、一定期間が過ぎれば書類が伝えられたとみなす制度だ。
ハンさんらは当初５０年近い不法行為に対する慰謝料として、１人あたり６億ウォンを策定していた。
ただし、当時統治者だった金日成主席と金正日総書記に主な賠償責任があるという理由で、正恩氏が責任を負うべき賠償額を相続比率に基づいて２２４６万ウォンと算定し、このうち２１００万ウォンを求めて訴訟を起こした。
北朝鮮の控訴の可能性はほぼないだけに、１審判決がそのまま確定する可能性が高い。
訴訟を主導した「忘れな草国軍捕虜送還委員会」は「北朝鮮に対する韓国裁判所の裁判権を認め、損害賠償命令を下した初めての判決」と明らかにした。
原告側は賠償金を確保するために南北経済文化協力財団が北朝鮮に送る著作権料を差し押さえるという計画を立てた。
財団は２００５年から朝鮮中央テレビの映像など北朝鮮著作物を使用するたびに著作権料を支払ってきた。
北朝鮮制裁直前の２００８年まで８億ウォン程度を送金し、その後は著作権料を裁判所に供託してきた。
２０１８年５月までに供託金が１６億５２００万ウォンであり、今は２０億ウォン程度になるものと推定される。
原告側ク・チュンソ弁護士は「この日の判決を根拠に、裁判所に民事執行申請を出し、供託金に対する債権差押命令および取立命令を受ける考え」と話した。
【この記事に対する私の見解】
といったように、対北ビラ散布を口実に、数々の挑発行為を繰り返してきた北に対し、これまでは一貫して弱腰な姿勢をとり続けてきた文政権ですが、ここにきて韓国のソウル中央地方裁判所が、朝鮮戦争時代に捕虜となった元韓国軍兵士に対する非人道的行為に対し、金正恩氏に対する賠償責任を認める判決を初めて下しました。
裁判所が北に命じた賠償額は、1人当たり2100万ウォン、約190万円と国家賠償としては少な目な金額ですが、北はどのような反応を示すか注目が集まっています。
文政権以降、政権に寄添った判決を出すことが多かったのですが、今回のソウル地裁の判決は、どのような意味を持つのでしょうか。
この判決は、金正恩政権に対する裁判の管轄権が韓国国内にあることが示されたことに加え、金正恩氏に対して初めて民事責任を問うた歴史的な判決であるとも捉えられます。
今回の判決を皮切りに、韓国で北朝鮮に損害賠償を求める訴訟が増え、そうなれば、南北関係における、韓国の反撃が始まったという見方をすることができるのです。
また、北の韓国に対する非人道的行為を挙げれば枚挙にいとまがありません。
2010年に46人が犠牲になった韓国海軍哨戒艦「天安」の撃沈事件をはじめ、韓国軍元捕虜が約8万人、韓国人拉致被害者が約10万人など、現在進行形で非人道的行為は続いています。
これらが裁判で訴えられることになれば、膨大な数の訴訟が起こされ南北対立に一気に火がつけられた形となるでしょう。
ここにきて急速に訴訟が進んだ背景には、記事にもあるように、2016年1月に北に拘束されていたアメリカ人のオットー・ウォームビア氏が、帰国後に死亡した事件を受けて、ウォームビア氏の遺族が北朝鮮を相手取って裁判を起こし、損害賠償金を支払わせるために北の資産を差し押さえたことに、韓国人被害者たちが北に対する行動を後押しされたこともありますが、北に対しどこまでも弱腰な文政権に対する国民の苛立ちと怒りが少なからず影響しているとも言われています。
もっとも、北が今回の判決を認めて賠償金を支払う可能性は限りなく低いと予想されています。
そのため、韓国政府が北朝鮮に支払うことになっている、金正恩氏や北朝鮮の動向・情勢などを伝える映像の使用料や著作権料などを凍結・差し押さえることで、賠償金の支払いに充てる可能性が高いとみられています。
文政権が進めてきた、北の企業が韓国で利潤をあげやすくなるような法整備に関してもこれらの動きにより頓挫する可能性が高まり、そうなれば、北の資金難にさらに拍車がかかる形となりそうです。
一方で、文在寅政権は南北融和政策を進めていますし、これまでも北の挑発に対し大きく声を上げることはありませんでした。
最高裁判長は文大統領が任命し、思想が近い人物と言われています。
地裁の判決がひっくり返される可能性は大いにありうるでしょう。
しかし、民間人が配布したビラに対し、あれだけ激怒した金正恩政権ですから「地裁の判断」とはいえ、深刻な挑発行為ととり、対立がさらに深まる可能性もかなり高いものとなるでしょう。
この訴訟合戦が加速していけば、北に忖度するために奔走したきた文大統領は、どのような対応を見せるのか、注視していく必要がありそうです。
■この記事に対する反響のポイント
・文政権下でこの判決が出た驚き
・裁判官は大丈夫なのか？
・北との今の関係は？
それでは、この記事に対する反響なのですが…まず、あちらの国民も「宝石のような判決」とこの判例を評価しています。
「親北政権の中でよくやった」というように、だれもが負けるだろうと予想していたようですね。
同時に「判事には身辺警護が必要」といったように、何かしらの報復を懸念しているようです。
「文災害の血が逆流しそうな判決」という意見もあるように、北との関係が微妙な状況で、波風を立てるこの判決は、政府にとっては悩みの種になるだろうと皆考えているようです。
【これに対する私の見解】
といったように、北に対し毅然とした対応を示したソウル地裁に賞賛の声が集まっています。
ですが、この流れを野放しにすれば、北は韓国側からの挑発と受け取ることは避けられないでしょう。
そうなってくると、日本に対する賠償金訴訟に触れるコメントでも見られたように、応募工判決においては「司法の判断に政府が介入できない」というスタンスをとり、政府は裁判に介入しないという立場を装っているわけですが、北に対しても、同じ姿勢を貫き通すとは思えません。
しかし、この問題に政府が介入することは、これまで限りなく黒に近いグレーで通してきた三権分立に政府が介入するという禁じ手、弁護士出身である文大統領自ら手を染めることになります。
単なる南北対立の問題だけでなく、文大統領が今後国際問題と韓国司法のあり方をどう捉えていくのかという大きなターニングポイントになりそうです。
この騒動の流れ次第では、文政権が強行している南北融和に大きな打撃を与えそうですね。
続きは動画で…
